アタシと秘密の王子さま
これ以上、誰かに絡まれるのがいやなので、俺はさっさと会社を後にした。
すでにスマホには、数件の通知が来ていた。
今別れたばっかりだろ…うるさいなぁ…

開くまでもないと思ったが、そこに小林の名前を見つけて、思わず顔がにやけた。

『お疲れ様です、今日はお世話になりました。またいろいろ教えてください。よろしくお願いします』

絵文字も、スタンプもない。事務的な文章に、俺は思わず吹き出してしまった。
まるで、ジジイのメールじゃないか。

「小林、可愛いなぁ…色気ないけど」

背が低くて、手も小さくて、でも強い。
不機嫌な顔、おどけた顔、満面の笑顔…
クルクルと変わる小林の表情が脳裏に浮かんだ。今日一日で、どれだけの表情を見たのだろう。
明日はどんな表情を見せてくれるのだろう?

さっき別れたばかりなのに、もう会いたくてたまらない。

こんなこと初めてだよ…

初めて感じる胸の高まりに、俺は胸のあたりを押さえた。
このドキドキは、悪くない…
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