アタシと秘密の王子さま
俺は柔道ができないから、アップの相手はできない。
だからアップが終わると、すぐに小林のところに行って、クラヴマガのトレーニングに入る。

毎日その繰り返し。
俺と小林の接点は、ほとんどそこしかない。

彼女はやっぱり、一流のアスリートだ。
とにかく努力家。妥協しない、粘り強い。多分、そんなに器用な人間じゃないけど、こうと決めたら絶対に諦めないタイプ。

いつもニコニコしている。他人に対して嫌な顔をしない。
今までもきっと、そうして生きてきたんだと思
う。
その姿が眩しい。

入社してからずっと、彼女のことが気になって仕方がない。

だけど今、俺の横にいるのは、岡野真弓…
入社以来、俺に絡んでくる同期の女。
正直言って、めんどくさい。
小林の席は遠くて、話す距離じゃない。彼女の横には、山田と早川がいた。
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