アタシと秘密の王子さま
彼は『シマダ』の一族で、みんなが憧れるレジデンスの住人。
違いすぎるなー、と思った。

「ごめんね、鳥越くん、あたし帰らなきゃ」
「なんで?」

彼が寂しそうな顔をしている。
あたしに向かって、そんな顔するのはなぜ?

「妹がね、大学の寮にすんでるんだけど、この土日に約束してるんだ」
「そっか…約束があるのか…」

あたしはベッドルームを借りて、もう一度スーツに着替えた。

「小林、着替えた?」
「うん」

ドアが開くと、着替えを済ませた鳥越くんが現れた。
ジーンズにTシャツ、ジャケット。
スーツとはちがう、カジュアルなスタイルに、思わずときめいた。

「車出すから、送らせて」
「でも悪いよ…」

「出かける用事があるから、そのついで。気にしないで」
彼があたしの腰に手を回して促す。

なにこれ、エスコートされてるみたいじゃない。
鳥越くん、どういうつもりなの?
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