アタシと秘密の王子さま
約束がある、というのは全くの嘘で、結局土日は何もしないで、ぼんやり過ごした。
一人で食べるクロワッサンと紅茶も、全然美味しいと思えなかった。

また月曜日が来て、あたしはいつもよりほんの少し早く家を出た。
ショッピングモールの1階にある『サン・グラール』によって、お昼を買っていこうと思ったからだ。

店に入ると、白いコックコートの男性が、眩しい笑顔で出迎えてくれた。

店内には香ばしいパンの香りが漂ってる。
カレーパンとかクリームパンとか、庶民的なものから、おしゃれなサンドウィッチなんかも揃ってる。

「ああ、鳥越くん、いらっしゃい」
あたしは耳を疑った。
まさか出勤前から彼に会うとは。
< 91 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop