アタシと秘密の王子さま
そういえば、店長さんと仲がいいって言ってたっけ。

「おはよ、小林」
静かな声で挨拶してきた。
「おはよ、鳥越くん。土曜日はありがとう」

「気にすんなって」
彼はやんわり笑って、あたしの持ってたトレイを取り上げる。
あたしのクリームデニッシュ!

彼はいくつかトレイに取ると、そのまま会計を済ませた。
本当だったら、あたしの方がお金を払いたいくらいなのに、彼に先を越されてしまった。

「はい、これ、お前の」
「鳥越くん、おおいよ!」
「俺のおごり。お前、もっと食え。軽すぎる」
あたしの顔が、ボッと熱くなった。

そんなあたしを気にもせず、彼は大股でスタスタ歩いていく。
彼にとっては、あの日の出来事なんて、なんともないことなのかもね。
あたしはそう思おうと決めた。
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