ひとりぼっちの王子
それから毎日俺は姫に連絡し、休みの日はデートに誘った。
始めはさすがに姫も戸惑っていたが、日に日に俺のことを受け入れるようになった。


そして今日も、この後食事に行くことになっている。
待ち合わせ場所に向かうと、姫が電話をしていた。


誰と話してるんだ?
俺は姫にバレないように、近づいた。



「━━━━━そう…良かったぁ!
━━━そうなんだ!じゃあ…しーちゃんも安心だね!
━━━━うん、うん。そうだね。私も久しぶりに会いたいな!」


会いたい?

誰に?

まさか………アイツ!!?
「━━━━━姫!!!」

「え?利玖?」
びっくりして、振り向く姫。

「誰だ!?電話!誰と話してるの!!
まさかアイツ?違うよね!?
姫は俺だけのものなんだから!!」
「ちょっ…落ち着いて!利玖!
元旦那さんだよ!妹さんがいて、その子の事報告してくれただけだよ!
…………あ、しーちゃんごめんね!
今、利玖来たから。
━━━━━うん、うん、じゃあまた」

電話を切った姫が俺に向き直る。
焦って取り乱す俺に、優しく語りかける。

「元旦那さんね。
重い病気の妹がいて、その子が有名なお医者さんの手術受けることが出来たらしくて、上手くいったよって報告してくれたの。
私その子のこと、本当の妹みたいに思ってて。
だから━━━━━」
「もういいよ!
もう大丈夫だから……!ごめん、取り乱して……」
姫を安心させるように、俺は微笑む。

「ううん、ちょっとびっくりしちゃったけど…」
「………なぁ、姫。
まさか九条のとこに戻る気じゃないよね?」

「え?まさか!そんなつもりないよ!
晴ちゃん……妹さんのことが気がかりだっただけだよ。
それに私がまだ未練があったとしても、しーちゃんには他に好きな人がいるから……」

「そうだよな!ごめんな。変なこと言った!
忘れて!」
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