氷の貴公子は愛しい彼女を甘く囲い込む
(絶対パーティなんて一生縁がないと思ってたから、無責任に言っちゃったのよね……)
偉そうに言ってしまった手前、言葉に詰まった綾に畳みかけるように、服も用意するし、エスコートするから大丈夫。立食だからマナーは心配ないし、有名店の特別メニューが食べ放題だよとか、珍しいアラブ料理が出るとか、デザートはベルギーから呼んだショコラティエが作るらしいよなど、こちらの不安を取り除きつつ、好奇心というか、主に食欲を刺激するような事を言葉巧みにプレゼンされ
「うーん。確かに何事も経験かな」という気になって来て、了承してしまったのだ。自分の流されやすさ、というか食い意地が恨めしい。
そんな訳で、暫くの間、間宮は「ラブラブ」な恋人同士のフリをする。
見返りとして綾はパーティで間宮のパートナーを務める事で話がまとまってしまった。
連絡先を交換し、名刺も受け取った。そこには『三笠ホールディングス海外新規事業推進室長 間宮海斗』と書いてあった。
日本有数の旧財閥系である三笠ホールディングスの室長という役職。
しかも年齢は綾より5歳年上の31歳だという。
肩書に対して年齢が若すぎやしないか。どんだけ優秀なんだと名刺を手に唖然としてしまったが、
『僕が言うのも何だけど、今までみたいに素性も確かめないで男とふたりきりになんてなるのは無防備過ぎるからね』
これからは気を付けて欲しい、と真顔で諭されてしまった。
そういえばつい最近、いつも二人の昼休憩の場所になっているあの『箱庭』に屋根がついた。
ポリカーボネート製の透明な素材のものなので、圧迫感無く雨風がしのげるようになっている。
こんな需要が限定されている場所もメンテナンスされることに驚いたのだが、間宮は『これで雨の日も来れるようになるね』と喜んでいた。
昼はいままでのように過ごし、夜は基本的にはヒルズ内で食事をした後、車で送ってもらうという流れだ。完璧にエスコートしもちろん紳士的にアパート前まで送り届けてくれる。
更に『綾が美味しそうに食べるの姿に癒してもらってるから』という謎の論理の元、最初に食事をした日から彼は綾に一切食事代を出させようとはしない。
ラブラブと見せつけているからかどうかはわからないけれど、幸いな事に赤井からの接触も無いままだ。
そして今日。
朝から間宮と出かける事になっていた。
『お互いの休日が重なったら、気分転換にヒルズの中では無く外でリフレッシュしよう。どこに行きたい?』と聞かれて答えていたのが今日行く水族館だ。
間宮曰く休日にデートしているエピソードもあった方が良いのではないかということだ。
赤井に対して見せつける以外にそんなエピソードが必要なのだろうかと思ったのだが、海斗と休日を過ごせるなら嬉しい――と、思うほど綾はふたりでいる事が楽しくなってきていた。
基本的にサラリーマンが休みの土日はショッピングモールの販売員である綾は出勤なのだが、今日は土曜日になのに珍しくシフトが入らなかった。
るりの方でシフトの調整を間違えて、スタッフが重複してしまったらしく今回は綾が休みになったのだ。
そのことを間宮に伝えると、車を出すからと家で待っててと、時間を指定された。
時間をちょうど5分過ぎた頃、スマートフォンが到着したという間宮からのメッセージを受ける。
フラットパンプスを履いて2階にあるアパートの部屋を出ると、建物の前に停車した車から彼が降りる所だった。
今まで送って貰うときは夜だったのであまり気にならなかったのだが、安アパートの前に停めてもらうにはドイツの有名メーカーの高級車もそれに似合い過ぎる間宮も場違い感が物凄い。
綾は慌てて鍵を閉めて、外階段を下りていく。
偉そうに言ってしまった手前、言葉に詰まった綾に畳みかけるように、服も用意するし、エスコートするから大丈夫。立食だからマナーは心配ないし、有名店の特別メニューが食べ放題だよとか、珍しいアラブ料理が出るとか、デザートはベルギーから呼んだショコラティエが作るらしいよなど、こちらの不安を取り除きつつ、好奇心というか、主に食欲を刺激するような事を言葉巧みにプレゼンされ
「うーん。確かに何事も経験かな」という気になって来て、了承してしまったのだ。自分の流されやすさ、というか食い意地が恨めしい。
そんな訳で、暫くの間、間宮は「ラブラブ」な恋人同士のフリをする。
見返りとして綾はパーティで間宮のパートナーを務める事で話がまとまってしまった。
連絡先を交換し、名刺も受け取った。そこには『三笠ホールディングス海外新規事業推進室長 間宮海斗』と書いてあった。
日本有数の旧財閥系である三笠ホールディングスの室長という役職。
しかも年齢は綾より5歳年上の31歳だという。
肩書に対して年齢が若すぎやしないか。どんだけ優秀なんだと名刺を手に唖然としてしまったが、
『僕が言うのも何だけど、今までみたいに素性も確かめないで男とふたりきりになんてなるのは無防備過ぎるからね』
これからは気を付けて欲しい、と真顔で諭されてしまった。
そういえばつい最近、いつも二人の昼休憩の場所になっているあの『箱庭』に屋根がついた。
ポリカーボネート製の透明な素材のものなので、圧迫感無く雨風がしのげるようになっている。
こんな需要が限定されている場所もメンテナンスされることに驚いたのだが、間宮は『これで雨の日も来れるようになるね』と喜んでいた。
昼はいままでのように過ごし、夜は基本的にはヒルズ内で食事をした後、車で送ってもらうという流れだ。完璧にエスコートしもちろん紳士的にアパート前まで送り届けてくれる。
更に『綾が美味しそうに食べるの姿に癒してもらってるから』という謎の論理の元、最初に食事をした日から彼は綾に一切食事代を出させようとはしない。
ラブラブと見せつけているからかどうかはわからないけれど、幸いな事に赤井からの接触も無いままだ。
そして今日。
朝から間宮と出かける事になっていた。
『お互いの休日が重なったら、気分転換にヒルズの中では無く外でリフレッシュしよう。どこに行きたい?』と聞かれて答えていたのが今日行く水族館だ。
間宮曰く休日にデートしているエピソードもあった方が良いのではないかということだ。
赤井に対して見せつける以外にそんなエピソードが必要なのだろうかと思ったのだが、海斗と休日を過ごせるなら嬉しい――と、思うほど綾はふたりでいる事が楽しくなってきていた。
基本的にサラリーマンが休みの土日はショッピングモールの販売員である綾は出勤なのだが、今日は土曜日になのに珍しくシフトが入らなかった。
るりの方でシフトの調整を間違えて、スタッフが重複してしまったらしく今回は綾が休みになったのだ。
そのことを間宮に伝えると、車を出すからと家で待っててと、時間を指定された。
時間をちょうど5分過ぎた頃、スマートフォンが到着したという間宮からのメッセージを受ける。
フラットパンプスを履いて2階にあるアパートの部屋を出ると、建物の前に停車した車から彼が降りる所だった。
今まで送って貰うときは夜だったのであまり気にならなかったのだが、安アパートの前に停めてもらうにはドイツの有名メーカーの高級車もそれに似合い過ぎる間宮も場違い感が物凄い。
綾は慌てて鍵を閉めて、外階段を下りていく。