氷の貴公子は愛しい彼女を甘く囲い込む
 車は高速道路に入って横浜方面に向かう。
 
「それにしてもお休みの日にまで、良かったんですか?平日でさえ申し訳ないと思ってるのに」
 
 普段から忙しい中、時間を割いて綾に付き合ってくれているのに、いくら交換条件といっても、申し訳ないと思ってしまう。
 
「いや、僕は楽しんでやらせてもらってるから」
 
 ハンドルを握りながら答える間宮の整った横顔は普段よりリラックスして見える。
 
「それに、城山さんにも申し訳なくて……」

 城山と言うのは間宮に専属でついている男性秘書だ。
 年は40代になるかどうかで優し気な面差しの上品な雰囲気の人だ。
 彼を紹介された時『室長に秘書?』と思ったが、そういうものらしい。
 綾の勤めていた会社では秘書は社長と専務位にしかついていなかった記憶があるが、さすが巨大企業は違うな、と感心した。 
 
 城山は間宮が仕事で忙しい時は代わりに自宅まで送ってくれる。
 当然、間宮の職場の人にそんな事までさせられないと言ったのだが、いつ赤井に絡まれるかわからないからと押し切られて、結局お言葉に甘えてしまっている。
 
「彩にはパーティに出て貰うんだから、城山も仕事の一環みたいなものだよ」

 気にしないで欲しいと言う間宮に 寧ろその代償であるパーティのハードルがめちゃめちゃ上がって恐ろしいんですけど、と気になってしまう。
 
 
 ふたりが訪れたのは人工島に作られた巨大なアミューズメント施設で、遊園地やレストラン、ショッピングセンター、そして水族館もこの敷地内にある。
  
 水族館もコンセプトによって施設自体が4つのゾーンに分かれているので見ごたえがある……はずだ。
 というのも、実は綾もこの水族館に来るのは初めてで。ホームページでチェックして来ただけなのだ。
 チケットを購入して館内に入ると、土曜日の為か親子連れやカップルなど、なかなか賑わっている。
 
 息を飲むような美しさの巨大水槽や、イワシの群れが光を反射しながら泳ぐ姿が美しい水槽、深海生物の展示などどれも興味深く、ふたりでひとつひとつを丁寧に見ながら進んでいく。
 
 薄暗い館内でも間宮の類まれな整った容姿と存在感は消せないらしく、時折女性客からの熱い視線がそそがれている。
 正直隣に立つのがいたたまれないが、もう今更気にしても仕方がない気がする。
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