氷の貴公子は愛しい彼女を甘く囲い込む
『氷の貴公子』――間宮海斗をそう呼ぶ人間もいる。
鋭利な目元、常人離れした端正な容姿も相まって、冷ややかで近寄りがたい雰囲気を纏う。
ビジネス用に笑顔を作る事はあるが、あくまで上辺だけだ。
心からの笑顔を他人に見せる事は無かったし、そもそもそのような感情を露わにする事も無い。
常に冷静で余裕のある態度を崩さず、不要だと判断すれば、その秀麗な眉一つ動かさず切り捨てるような事すらする。
目上の人間にも全く臆さず堂々と対峙し、相手を自分の思うように動かしてしまうカリスマ性に惹きつけられる人間は多い。
それは彼の生まれ持つ『血筋』故だと城山は考えている。
しかし……
「最近の海斗様には驚かされる事ばかりです。そういう冗談を言う方だと思っておりませんでした。それに、急にショッピングモールの屋上の一か所だけに屋根を付けろと仰るし……しかも場所指定で、短納期でしたよね」
「別に冗談じゃない、それに、屋根の件は、場所的に有効だから提案したまでだ。利用者の利便性があがるだろう?」
(あがるのは主に海斗様の利便性、ですよね)
早急に雨風が防げるようにと言われ、発注から工事完了までを3日で終わらせるべく手配した有能秘書は思うが、言葉にしたのは違う事だった。
「綾様を紹介いただいた時も海斗様の変貌ぶりも信じられませんでしたから」
初めて綾を紹介され時、城山は綾に対する海斗の態度を見て、長年仕えて来た人物は実は二重人格者だったなんて、と本気で思うくらい驚愕した。それほど、彼の表情は見たことが無いくらい柔らかく優しげだったのだ。
海斗はスマートフォンをポケットに戻し、代わりに目の前に置かれたコーヒーカップを持ち上げた。
「別に彼女に対して自分を取り繕っている訳ではない。自然とそうなってしまうだけだ」
こんなに女性に甘くなってしまう人間だったのか、と自分でも驚いている。
今まで自分の容姿や経済力に引きよさられてくる女性達は多かったが、どんなに心の内を隠していても、聡い海斗は彼女たちの打算をすぐに嗅ぎ分けてしまえた。
それを承知で敢えて付き合った事もあったが、どこか冷めてしまい長続きはしなかった。
自分の時間を削ってまで女性と付き合う必要性が感じられなくなり、ここ数年恋人は居ない。
しかし今は年下の彼女が可愛くてたまらない。完全に骨抜きになっている。
『箱庭』で会った時から綾は自分に対して構えず、自然に接してくれた。元から素直で人なつっこい性格なのだろう。
鋭利な目元、常人離れした端正な容姿も相まって、冷ややかで近寄りがたい雰囲気を纏う。
ビジネス用に笑顔を作る事はあるが、あくまで上辺だけだ。
心からの笑顔を他人に見せる事は無かったし、そもそもそのような感情を露わにする事も無い。
常に冷静で余裕のある態度を崩さず、不要だと判断すれば、その秀麗な眉一つ動かさず切り捨てるような事すらする。
目上の人間にも全く臆さず堂々と対峙し、相手を自分の思うように動かしてしまうカリスマ性に惹きつけられる人間は多い。
それは彼の生まれ持つ『血筋』故だと城山は考えている。
しかし……
「最近の海斗様には驚かされる事ばかりです。そういう冗談を言う方だと思っておりませんでした。それに、急にショッピングモールの屋上の一か所だけに屋根を付けろと仰るし……しかも場所指定で、短納期でしたよね」
「別に冗談じゃない、それに、屋根の件は、場所的に有効だから提案したまでだ。利用者の利便性があがるだろう?」
(あがるのは主に海斗様の利便性、ですよね)
早急に雨風が防げるようにと言われ、発注から工事完了までを3日で終わらせるべく手配した有能秘書は思うが、言葉にしたのは違う事だった。
「綾様を紹介いただいた時も海斗様の変貌ぶりも信じられませんでしたから」
初めて綾を紹介され時、城山は綾に対する海斗の態度を見て、長年仕えて来た人物は実は二重人格者だったなんて、と本気で思うくらい驚愕した。それほど、彼の表情は見たことが無いくらい柔らかく優しげだったのだ。
海斗はスマートフォンをポケットに戻し、代わりに目の前に置かれたコーヒーカップを持ち上げた。
「別に彼女に対して自分を取り繕っている訳ではない。自然とそうなってしまうだけだ」
こんなに女性に甘くなってしまう人間だったのか、と自分でも驚いている。
今まで自分の容姿や経済力に引きよさられてくる女性達は多かったが、どんなに心の内を隠していても、聡い海斗は彼女たちの打算をすぐに嗅ぎ分けてしまえた。
それを承知で敢えて付き合った事もあったが、どこか冷めてしまい長続きはしなかった。
自分の時間を削ってまで女性と付き合う必要性が感じられなくなり、ここ数年恋人は居ない。
しかし今は年下の彼女が可愛くてたまらない。完全に骨抜きになっている。
『箱庭』で会った時から綾は自分に対して構えず、自然に接してくれた。元から素直で人なつっこい性格なのだろう。