氷の貴公子は愛しい彼女を甘く囲い込む
昼近くに遅番のメンバーが来たので、綾はるりと入れ替わりで遅めの昼食を取りに行く。
ショッピングモール内には従業員専用の休憩所が設けられているのだが、雨の日を除き綾はあまり行くことは無い。
とっておきの場所があるからだ。
このショッピングモールの屋上には本格的な日本庭園が広がっている。高級料亭にあるような茶室や池まであり、都会とは思えない程の静けさと趣のある空間が広がっている。
エリア自体は誰でも自由に立ち入る事が出来、初めて訪れた時は格調の高い雰囲気に中に入るのを躊躇したのだが、実はカジュアルなエリアもあり所々椅子やテーブルもあり休憩も出来ようになっていた。
綾は美しい庭に惹かれて、昼休憩の度に通い、あまり目立たない場所でコンビニで買って来たオニギリやパン、たまに自分で作って来た弁当を食べていたのだが、偶然見つけたのが今いる場所だ。
「うーん、いつ来てもここは最高っ」
目の前に広がる風景を見上げながら伸びをして独り言ちてみる。誰も居ないからこんなことも出来る。
右側にこの街のランドマークであるオフィスビル、左を見ると高級レジデンス、病院までが一度に見渡せる。今日は天気もいいから開放感も格別だ。
この場所を見つけたのは本当にラッキーだったと思う。
ここに来るには庭園の大きな植栽の裏側の細い通路を通る必要がある。
しかも通路の先には木製の壁があって行き止まりになっているように見えるのだ。
綾はなんだか探検しているような気持になって、気まぐれに進んでみたら奥まで行くと人ひとり通れる隙間があったのだ。好奇心に勝てず壁の横を通るように回り込んでみたら木製のベンチが一つだけ置かれた箱庭的なごく小さな空間が現れたのだ。
だれがどういう意図でこんな場所を作ったのかわからない。
ものすごいわかりにくい場所だが、立ち入り禁止にはなっていないようだ。
温かみのある木のベンチに座ると、オフィスビルを中心をしたこの街全体を見上げる形で一望で出来るから、人が来ることを前提に作られたスペースなのだろう。
とにかく眺めが良いし開放感もある。しかも各建物からこちらは距離があるので向こうからは自分は見えないだろう。
ここでぼんやりビルや空を眺めたりするのが最高の気分転換なのだ。青空を背にしたビルは無機質だが陽の光を反射してキラキラとしている。
この時間、この景色は自分が独り占めた。なんて贅沢なんだろう。
「ここを見つけた人の特典なのかなー。ホントに分かり辛いもんね……庭師さんだか、設計者さんかわからないけど、こんなに素敵な昼の居場所を作ってくれてありがとう」
誰かが見つけてSNSで拡散しないようにと祈るばかりだ。
ただ、綾が知る限りこの場所の存在を知っている人物がもう一人いる。
今日は来るだろうか。そう思った時だった。
ショッピングモール内には従業員専用の休憩所が設けられているのだが、雨の日を除き綾はあまり行くことは無い。
とっておきの場所があるからだ。
このショッピングモールの屋上には本格的な日本庭園が広がっている。高級料亭にあるような茶室や池まであり、都会とは思えない程の静けさと趣のある空間が広がっている。
エリア自体は誰でも自由に立ち入る事が出来、初めて訪れた時は格調の高い雰囲気に中に入るのを躊躇したのだが、実はカジュアルなエリアもあり所々椅子やテーブルもあり休憩も出来ようになっていた。
綾は美しい庭に惹かれて、昼休憩の度に通い、あまり目立たない場所でコンビニで買って来たオニギリやパン、たまに自分で作って来た弁当を食べていたのだが、偶然見つけたのが今いる場所だ。
「うーん、いつ来てもここは最高っ」
目の前に広がる風景を見上げながら伸びをして独り言ちてみる。誰も居ないからこんなことも出来る。
右側にこの街のランドマークであるオフィスビル、左を見ると高級レジデンス、病院までが一度に見渡せる。今日は天気もいいから開放感も格別だ。
この場所を見つけたのは本当にラッキーだったと思う。
ここに来るには庭園の大きな植栽の裏側の細い通路を通る必要がある。
しかも通路の先には木製の壁があって行き止まりになっているように見えるのだ。
綾はなんだか探検しているような気持になって、気まぐれに進んでみたら奥まで行くと人ひとり通れる隙間があったのだ。好奇心に勝てず壁の横を通るように回り込んでみたら木製のベンチが一つだけ置かれた箱庭的なごく小さな空間が現れたのだ。
だれがどういう意図でこんな場所を作ったのかわからない。
ものすごいわかりにくい場所だが、立ち入り禁止にはなっていないようだ。
温かみのある木のベンチに座ると、オフィスビルを中心をしたこの街全体を見上げる形で一望で出来るから、人が来ることを前提に作られたスペースなのだろう。
とにかく眺めが良いし開放感もある。しかも各建物からこちらは距離があるので向こうからは自分は見えないだろう。
ここでぼんやりビルや空を眺めたりするのが最高の気分転換なのだ。青空を背にしたビルは無機質だが陽の光を反射してキラキラとしている。
この時間、この景色は自分が独り占めた。なんて贅沢なんだろう。
「ここを見つけた人の特典なのかなー。ホントに分かり辛いもんね……庭師さんだか、設計者さんかわからないけど、こんなに素敵な昼の居場所を作ってくれてありがとう」
誰かが見つけてSNSで拡散しないようにと祈るばかりだ。
ただ、綾が知る限りこの場所の存在を知っている人物がもう一人いる。
今日は来るだろうか。そう思った時だった。