厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「どこまで御屋形様をお苦しめになれば、気が済むのですか」


 険しい表情で、相良は私を責める。


 「お気持ちの整理がお付きになるまで、政務はお休みになると重ねて申しているではございませぬか。なぜに無理強いをなさるのです」


 「だから、そろそろご復帰をと申し上げているのです。尼子との一件の後始末は、御屋形様の御裁定なしでは前に進まぬことも多く、」


 「……それはあなた様の余計な功名心のために、引き起こされた悲劇そのものにございます。だから私はあれほどまでにお止めいたしましたのに」


 相良はまたしても、私が推し進めた尼子との戦を批判し始めた。


 「今さらそのようなことを申しても、何も始まらぬ。今必要なことは、不首尾に終わった戦の総括を済ませ、これからの課題を」


 「責任を取られるおつもりはないのでございましょうか」


 「責任だと?」


 「この度の不始末は、陶どの、全てあなた様の責任でございます」


 相良ははっきりとした口調で私に告げた。
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