厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 武士としての最高の誉れは、戦にて華々しく散ること。


 しかし晴持さまには事故による溺死という、武士としては相応しくない死に場所を演出させてしまった。


 私のごり押しが原因で。


 「そこまで申すなら相良どの、あなたも武士として晴持さまの仇を討って御屋形様に敵の首を献上してはいかがかな」


 相良は武士ではあるが、館に仕える文人として生きているため軍事力は有さない。


 それを知っていて私は、相良に言い返した。


 「敵の首を取るだけが、武士としての勤めではございません。そこまで武士の誇りにこだわるのでしたら陶どの、今回の不始末の責任を武士らしくお取りになってはいかがなものでしょうか」


 「責任?」


 武士としてのけじめ。


 それはすなわち、


 「腹を召されよ! ご自身の功名心だけで無益な戦を提唱された挙句に晴持さまの命を奪い、御屋方様をお苦しめになった責任は、それくらいせねば到底取ることはできません!」


 なんと相良は、私に切腹を勧めてきた。
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