厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「つらいことではあるが、悔やんでばかりいても始まらない。……折を見て御屋形様には、今度は九州の大友(おおとも)家から養子をお迎えになられるようお勧めするつもりだ」


 「大友家から?」


 「四国の一条家同様、御屋形様のもう一人の御姉君が九州の大友家に嫁いでおり、男子を設けられている。そちらから養子をいただいて、大内家の跡取りとしてお迎えするのだ」


 ……冷泉どのの考えに、私も同意した。


 御屋形様の姉上の子なら、晴持さま同様甥にあたり血縁関係も近い。


 晴持さまを大切に育てられたように、もう一度甥を養子に迎え、養育することに楽しみを見い出していただけたら。


 時の流れと共に、御屋形様の心の傷もいつしか薄れていくことを期待した。


 そしていつの日にか。


 以前のような御屋形様に、戻っていただけたら……。
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