厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「それはなりません。先の遠征で出費がかさみ、これ以上の重税は領民たちの了解を得られるどころか、」


 「だから、その遠征を強く推したのは、他ならぬお前であろう!」


 ……まただ。


 御屋形様はご自身のみならぬ大内家の運命の暗転を、私のせいにする。


 「お前の顔を見ていると、晴持の面影がちらついて眠れなくなる。下がれ」


 そして私に背を向ける。


 「御屋形様、」


 もはや私にかける言葉すら、御屋形様には存在しない。


 「下がられよ。我らこれから茶会を予定しております。華やかな宴を台無しにするおつもりか」


 すっかり寵臣の座に収まった相良武任(さがら たけとう)が、私を追い返そうとする。


 「これだから田舎者は……」


 背後で御屋形様の取り巻きとなった公家たちが、私を蔑んだ目線をぶつける。


 「……」


 取り付く島もないまま、私はその場を立ち去った。


 「寵童上がりの分際で、ほんま生意気な」


 去りゆく私の背に、公家どもが蔑みの言葉を投げかけてきた。
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