厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 ……御屋形様は私に代わって、文治派(官僚グループ的存在)の相良武任を寵愛なさるようになった。


 「幼き頃より、手塩にかけて寵愛なされた陶どのならまだしも」


 周囲の者どもが噂する。


 「あんな御屋形様よりも年上の男が、今度は寵愛を受けるとは」


 新たに御屋形様の寵愛を受ける事となった相良は、私より二十も年上。


 美少年を好まれる御屋形様の趣向からすると、かなり異質な選択で。


 誰もが不思議そうな顔をした。


 確かに相良は、年齢の割には若々しく美しい顔立ちをしているとはいえ。


 御屋形様よりも年上だ。


 ……だが私は何となく理解できた。


 御屋形様は年上で落ち着きのあり、教養もある相良どのに、癒やしを求めていたのだ。


 今は私に対する征服欲よりも、相良どのに癒やされることを御屋形様は欲していたのだ。
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