厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 御屋形様が現実逃避の日々を送り続けている間に。


 宿敵・尼子は勢力回復に専念。


 一時は私の手で、息の根を止める寸前まで追い詰めたはずの尼子は今や。


 私に奪われた領地の大部分を回復し、再び大内家に脅威を与えつつある。


 尼子征伐の際は共に戦った、傘下の毛利家は。


 周辺小豪族と次々に婚姻関係を結び、勢力強化を図っていると聞く。


 ……それぞれがあの戦の痛手から立ち直ろうと、様々な手を尽くしているにもかかわらず。


 御屋形様は今日も昼間から、宴会三昧。


 無為に一日をお過ごしになる。


 周りは少しずつ動き始めているというのに、御屋形様は何もなさらないばかりか。


 新たな一歩を踏み出すことを、かたくなに拒まれる。


 ご自身の中に作り上げた、夢の世界から目覚めようとなさらない。


 苦々しくは思いつつも、私にはどうすることもできなかった。


 (晴持さまを殺したのは私……)


 私の無理な遠征計画のせいで、晴持さまは冷たい海の中、命を散らしてしまわれた。


 その罪の意識が、未だに私を苦しめている。


 罪の意識ゆえ、御屋形様をお止めできない。
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