厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 最初は一時的なものだと思っていた。


 敗戦の衝撃で御屋形様が自暴自棄になるのは、やむを得ないことであり。


 いずれは時の流れがすさんだ心を癒してくれると。


 そして以前の御屋形様にお戻りになられると信じていた。


 しかしながら……待てど暮らせど。


 御屋形様は痛手から立ち直ることはなく、いくつ季節が巡っても、遊興三昧の日々に溺れたまま。


 私を見ようともしない。


 心が離れていく……。


 もはやつらい現実を受け入れざるを得ない。


 幼い頃から、私は常に御屋形様と共にいた。


 御屋形様のために生きてきた。


 (五郎……)


 甘い囁きで名を呼ばれ、抱きしめられながら満たされ眠る数えきれない夜。


 全ての美しい思い出が、今となっては私を苦しめている。


 永遠に続くと思っていた日々が途絶え、孤独な現実を一人で噛みしめなければならない。


 残酷すぎる時の流れに、この身は切り裂かれそうになる……。
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