厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「だから申したのに。永遠なんてどこにもないと」


 貞子さまの一言が、私の胸に突き刺さる。


 そしていつぞやの、恋文誤配事件を思い起こす。


 ……御屋形様が私に、恋文を送った。


 しかし取り次いだ者が勘違いしてしまい、よりにもよって貞子さまに届けたのだった。


 すでに私と御屋形様の関係をご存じだったとはいえ、御屋形様が別の男に送った恋文を手に取られ、貞子さまはどれほどお怒りに……。


 と思いきや、余裕の態度で以下のような和歌を私に送ってきたのだった。


 「頼むなよ 行く末かけて 変わらじと


 我にも言ひし 言の葉の露」


 (あてにしてはだめ。永遠に変わらないと私にも告げたそんな言葉を)


 しかも「行く末」の「すえ」には、私の名字の「陶」の意味が込められているようだ。


 この上ない皮肉を込めて送られてきたこの手紙を目にした時、私は驚きを隠せなかったが、貞子さまの機知には感服させられたものだった。
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