厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 西国一の戦国大名・大内家次期当主の正室として、帝の仲介もあって縁組が決まり。


 都からはるか周防まで嫁がれた貞子さま。


 京の都への憧憬が強い御屋形様は当初、帝と縁戚関係にある名門貴族出身で、京風に洗練された身のこなしの貞子さまを丁重にもてなした。


 美しくて頭の良い貞子さまを、御屋形様が溺愛なさっている様子を目にして、周囲の者たちは大内家の明るい未来を信じて疑わなかった。


 ところが。


 いつしか御屋形様は貞子さまを避けるようになっていたのだ。


 明確な理由やきっかけがあったわけではない。


 次第に御屋形様は、貞子さまの美しさと気位の高さに頭が上がらなくなってしまったのだ。


 身分的にも人間としての器も全て妻のほうが上。


 言葉にできない劣等感が御屋形様を苦しめた。


 敗北感から逃れるように、御屋形様は貞子さまを避け、取り巻きの美少年たちに救いを求めるようになった。


 その中の一人が……私。
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