厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 あの悲劇の月山富田城(がっさんとだじょう)の戦いから、数年の年月が流れた。


 依然として月日が悲しみを癒すことはないようで……、御屋形様はあいも変わらず遊興三昧。


 大内家当主として政務を遂行することもないまま、雑用は寵臣の相良武任(さがら たけとう)らに丸投げ。


 都から落ち延びてきた公家たちを集めて、朝も夜も遊び明かし、財産を湯水のように浪費なさる。


 当然大内家の財政は苦しくなり、赤字を補うため重臣たちの反対を押しのけ、領民たちに増税を課す。


 私はお止めすることもできぬまま、黙って御屋形様の暴走を見守るしかなかった。


 かつての寵愛を失っていたため、意見が通りにくくなっていたのもあるが。


 月山富田城での無謀な戦いを推進し、それにより後継者だった晴持さまの命を奪ってしまったことに対する罪悪感が、未だに私を苦しめている。
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