厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 ……私を苦しめているのは、罪悪感だけではない。


 もう戻ることのできない、御屋形様との甘い日々への追憶が、私の胸を締め付ける。


 御屋形様に抱かれながら迎えた、四季の数々。


 二人の愛は決して変わることはないような気がしていた。


 しかしこうももろくも、消え失せてしまおうとは。


 春、散りゆく花びらのように。


 夏、燃ゆる陽炎のように。


 秋、はかなげな月の明かりのように。


 冬、淡くも溶けゆく雪の一片のように……。


 御屋形様の瞳に映ることのない現実を思い知らされる。


 どんなに時が流れても、あの日々は戻らない。


 目が覚めたら全てが元に戻っていますように……と、眠りに落ちる前に毎晩祈りを捧げ。


 朝を迎えるたびに、むなしい現実と再び向きあう。
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