厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
「そう険しい表情ばかり」
庭園を流れる小川のほとりに佇み、蛍の舞う時を待ち続けていた私の背後に、御屋形様の正室・貞子さまが近付いていた。
「男の一番美しい時期を、憂いてばかりで無駄に過ごすなど、なんて惜しいこと」
からかうようなまなざしを私に向ける。
「そろそろ夕闇迫る刻でございます。お屋敷に戻られたほうが」
「私がいようといまいと、誰も気にも留めぬ」
「……」
御屋形様は依然として、貞子さまを避けられたままだ。
以前から劣等感を覚えていたのに加え、享楽な日々に溺れてしまってからはますます。
まさに合わせる顔がないとでも示すかのように。
……大内館を取り囲むこの庭園は、御屋形様の指示で整えられたもの。
京風なものをこの上なく好まれる御屋形様の趣味により、京の庭園をそのままここに移してきたような豪勢な作り。
庭園を流れる小川のほとりに佇み、蛍の舞う時を待ち続けていた私の背後に、御屋形様の正室・貞子さまが近付いていた。
「男の一番美しい時期を、憂いてばかりで無駄に過ごすなど、なんて惜しいこと」
からかうようなまなざしを私に向ける。
「そろそろ夕闇迫る刻でございます。お屋敷に戻られたほうが」
「私がいようといまいと、誰も気にも留めぬ」
「……」
御屋形様は依然として、貞子さまを避けられたままだ。
以前から劣等感を覚えていたのに加え、享楽な日々に溺れてしまってからはますます。
まさに合わせる顔がないとでも示すかのように。
……大内館を取り囲むこの庭園は、御屋形様の指示で整えられたもの。
京風なものをこの上なく好まれる御屋形様の趣味により、京の庭園をそのままここに移してきたような豪勢な作り。