厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「滅びるとは、いささか大袈裟すぎませんか」


 私は思わず笑ってしまった。


 「世は乱世。各地の大名たちが激しく勢力拡大を目指してしのぎを削っているというのに、我らが御屋形様は全く意に介せず遊興三昧」


 「……」


 「今もしも他国に攻められでもしたら、ひとたまりもないのではないか」


 「……私が、御屋形様をお守りします」


 「権限を一つ一つ取り上げられ、飼い殺し同然のそなたに、この御屋形様を守り抜くことができるか?」


 貞子さまの言われる通りだ。


 以前の私ならば、大内家の総大将として軍事面では全権を掌握していた。


 だが今は、それも不可能。


 軍を動かすにも多方面に許可を得なければならないし、すっかり戦を嫌悪するようになられた御屋形様は、絶対にお許しにならない。


 たとえ何者かが、この大内館に攻め入ってきたとしても……?
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