厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 夜の闇が深まるにつれ、一層の孤独を感じる。


 数えきれない夜を御屋形様と共に過ごし、愛の言葉のみならず夢も語り合った。


 いつか共に京に参ろうと、何度も約束したのに……。


 大内家の当主は代々、上洛して朝廷の政務に関与するほどの力を有していた。


 その伝統に基き、御屋形様もいずれは上洛するはずだった。


 「お前を京の都まで連れて行く」


 甘い言葉が幾度となく耳に注がれた。


 御屋形様は私を京に伴うと約束され、私もその日を心待ちにしていた。


 だが尼子など、周辺諸国の情勢が芳しくなく、少し叩きのめしてから……などと時期を推し量っているうちに、好機を逃してしまった。


 今や御屋形様には、上洛の野心など存在しないだろう。


 このままずっとこの山口で、遊興三昧の日々に明け暮れているだけで満足されているのだ……。
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