厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 だが私は、日夜焦燥感に苛まれている。


 このままでいいのか。


 見て見ぬふりをしたままで、この地で悶々と日々を過ごしているだけで……。


 こうしている間にも、この国の他の大名たちは、着実に力をつけている。


 国元を統一して上洛し、荒れ果てた京の都を再建し、その活躍が帝に認められて征夷大将軍に任ぜられ、衰退した室町幕府を乗っ取る者が現れるかもしれない。


 遅かれ早かれ、いずれ誰かがきっと……。


 なのに私は、御屋形様の堕落を止めることもできぬまま、黙って見つめているだけ。


 このままではいけないことは重々承知にもかかわらず、どうすることもできない……。
< 135 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop