厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「御屋形様は何を考えておられるのか。これでは貞子さまのお立場が」


 いつからだろう。


 いつから御屋形様は?


 ……彩子と情を通じていたのだろう?


 少なくとも私が寵愛を受けていた当時は、そんな兆しはどこにも……。


 「ともかく、今は祈るのみです。生まれてくる御子が男子ならば、大変なことになります」


 冷泉どのも表情を曇らせる。


 まさに冷泉どのが危惧される通りで、今もしも御屋形様に男子誕生となったら、非常に面倒なことがいくつも起こり得る。


 養子として迎えた晴英さまは、その足元が揺らいでしまう。


 生母として彩子の地位は上がるだろうし……、そうなると貞子さまのお立場は?


 ……不吉な予感がする。


 大内家に暗雲が立ち込めつつあるのを感じる。
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