厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
***


 その夜。


 「雷は怖くないか」


 「いえ。怖くなど、」


 夕方から急に雨脚が強くなり、居城の大内館(おおうちやかた)に戻るのは断念。


 途中の寺に、ようやく追いついた供の者共々宿泊することとなった。


 大内家の当主がわずかな手勢で寺に泊まるなど、危険極まりないことのように思われるが。


 この当時は政情が比較的安定しており、御屋形様を狙って攻めて来るような者など思いつかなかった。


 いや……もしもそのように、御屋形様のお命を奪おうとする者が現れたら。


 未熟ではあるものの、この私が手に刃を取り、命を賭してでも御屋形様をお守りする所存であったが。
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