厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 寺で食事を済ませ、やがて夜も更けてきたので床に入ろうとした時。


 御屋形様が私の寝所に入ってきた。


 私が雷に怯えて眠れないのでは、と気遣ってくれたようだが。


 あいにく私は、雷など怖くはない。


 実は雷を恐れていたのは、御屋形様だったのかもしれない。


 それとも……私の元を訪れる口実だったのか。


 今となっては分からない。


 「五郎、側に寄るがいい」


 「御屋形様」


 私の床に入り込んだ御屋形様は、私を引き寄せた。


 逆らう術もなく私は、御屋形様の胸に抱かれる。
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