厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 ……まだ十代前半の私の身には、御屋形様の愛は喜びよりもむしろ、痛みを伴う行為だった。


 「五郎、つらくはないか」


 「いえ……」


 この身を貫くような痛みよりも。


 美しい御屋形様と肌を重ね、温もりを確かめ合えた感動のほうが大きかった。


 「お前は私の、かけがえのない存在だ。この世の果てまで必ず連れて行く」


 「必ずお供いたします。御屋形様のお望みとあらば……」


 私の乱れた髪は、ほどけて床に広がっていた。


 御屋形様との絆をこの身に刻みつけ、命を賭けてでも御屋形様をお守りしようと誓った嵐の夜だった。
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