厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
***


 「離婚……!?」


 突然の貞子さまのお言葉に、私は驚きを隠せない。


 「どういうことでしょうか」


 「言葉の通り。御屋形様とは離縁いたし、故郷である京に帰る」


 「……ご理由は、おさいの方と義尊さまでしょうか」


 「そう思われてもよい」


 ……今の時代、御屋形様のような権力者が妻を複数囲うのはいたって普通のことで。


 それが原因で正室が離縁を申し出るなんて、聞いたことがない。


 まさに前代未聞……。


 尋常ではない出来事だった。


 「……すでに御屋形様には申し上げられたのですか?」


 「反対はなさらなかった」


 「まさか、そんな」


 西国一の支配者である、大内家の当主が正室と離婚。


 こんな異常な事態をそのままにしておけば、大内家の恥を日本中に広める結果となる。


 そしてそれは同時に、貞子さまによからに評判をもたらすかもしれない。


 当然私は、お二人の離婚という最悪な結末を阻止せねばならなかった。
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