厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
……そして貞子さまは御屋形様と離婚して、故郷である京の都へ帰還なされた。
この一件は当然のごとく周辺に衝撃を与えた。
ある者は「御屋形様があまりに衆道(男色)に夢中で、貞子さまがあきれて離縁を申し込んだのだ」とか。
またある者は「側室(おさいの方)に夢中になり正室にしたいと望むあまり、邪魔になった貞子さまを追い出したのだ」とかあれこれ噂をしている。
情報が錯綜していた。
それらは全てが真実のようでもあり、全てが真実を正しく表現しているとも言い切れなかった。
いずれにしても……貞子さまは思うところがあって、自らの意志で京に戻られたのは事実。
貞子さまが山口を去られて後、御屋形様はおさいの方を新たに正室に迎えられた。
身分違いではあるものの、次期当主の母であるという事実の前に、異議を唱えることができる者はいなかった……。
邪魔者であった貞子さまがいなくなり、正室の座を手にしたおさいの方はますます増長し、取り巻きの者たち共々館内を闊歩するようになった。
次期当主の母という地位を笠に着ているが、どこの馬の骨とも知れぬ男との間に密通により設けた子であり、御屋形様の実子ではないにもかかわらず。
この一件は当然のごとく周辺に衝撃を与えた。
ある者は「御屋形様があまりに衆道(男色)に夢中で、貞子さまがあきれて離縁を申し込んだのだ」とか。
またある者は「側室(おさいの方)に夢中になり正室にしたいと望むあまり、邪魔になった貞子さまを追い出したのだ」とかあれこれ噂をしている。
情報が錯綜していた。
それらは全てが真実のようでもあり、全てが真実を正しく表現しているとも言い切れなかった。
いずれにしても……貞子さまは思うところがあって、自らの意志で京に戻られたのは事実。
貞子さまが山口を去られて後、御屋形様はおさいの方を新たに正室に迎えられた。
身分違いではあるものの、次期当主の母であるという事実の前に、異議を唱えることができる者はいなかった……。
邪魔者であった貞子さまがいなくなり、正室の座を手にしたおさいの方はますます増長し、取り巻きの者たち共々館内を闊歩するようになった。
次期当主の母という地位を笠に着ているが、どこの馬の骨とも知れぬ男との間に密通により設けた子であり、御屋形様の実子ではないにもかかわらず。