厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 ……貞子さまに最後にお会いした際、私にこう言い残された。


 「御屋形様のことに関しては、全てお前に委ねる」と。


 私に委ねる?


 つまり……私の好きにするがいいと。


 もしもこのままでは大内家のためにならないと判断したならば……、私がこの手で御屋形様を殺めても構わない、と?


 貞子さまは自らの手で、御屋形様に止めを刺す覚悟は持てなかった。


 だから最後の日が訪れる前に、京の都へと戻ってしまわれた。


 ご自分では手を下せなかったけれど、その役目は今後私に委ねられた。


 全ては私の判断に任された。


 いつか私が御屋形様をこの手にかける日が訪れるなんて……、本当に有り得るのだろうか?
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