厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 現在ここ周防の国、というよりこの大内館内部は。


 私が代表的存在である、軍事部門を重要視する「武断派(ぶだんは)」。


 相良に象徴される、政務官僚主体の「文治派(ぶんちは)」。


 これら二つの派閥に別れての重臣たちの対立は、激しさを増していた。


 それに正室・おさいの方の取り巻き軍団に加わる、おさいの方の実父である小槻伊治など京からの亡命公家たち。


 彼らの存在も、重臣たちの派閥争いを複雑にしていた。


 お互いがお互いの存在を否定し、認めようとしない。


 そしてそれぞれが、御屋形様の寵愛を得ようと策略を張り巡らせている……。


 争いはとどまるところを知らない。


 冷泉どのも昔は、重臣たちの分裂を回避しようと様々手を尽くしてきたものの。


 年々ひどくなる対立に、もうお手上げ状態のようだ。


 もはや大内家内部は、混迷の様相を呈してしまってる。
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