厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
***


 「隆房。いい加減に相良と和解できぬものか」


 いがみ合う私たちを見かねたのか。


 ついにある日、御屋形様が私にそうおっしゃられた。


 「私とて何も好き好んで、相良どのといがみ合っているわけではありません。かの者のやり方が我慢ならないからでございます。さらなる増税など……」


 財政難を理由に、相良は増税を提案してきた。


 御屋形様にはすでに根回ししていたようで、御屋形様も同意の上で……。


 これまでも重税に苦しめられてきた領民たちの我慢も、限界に達している。


 むしり取られた税金が、よりよい暮らしをもたらすのならまだしも。


 税金の行き先は、大内家に寄生する亡命公家どもの生活費とだ。


 しかも連中の贅沢三昧により、税金は湯水のごとく消え去っていく運命……。
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