厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「家柄など問題ではない。大事なのは相良がどれだけ大内家に貢献したかどうかだ」


 家柄など問題ではない?


 御屋形様がおっしゃられても説得力がない。


 かつて大内家の格を上げるために、京の都から帝の血を引く公家の娘(貞子さま)を正室に迎えられた御屋形様が。


 「政務と軍務、大内家の両輪を成す陶家と相良家が縁組で結ばれることは、私にとって大変望ましいことだ。だから……分かっておるな、隆房?」


 「……」


 御屋形様のその言葉は、私に尋ねているような形を取ってはいるものの。


 実際は命令にすぎない。


 私は幼き頃から、ずっと亡き父上によって教え込まれていた。


 御屋形様のおっしゃることは、絶対であると。


 御屋形様のご意思に、決して逆らってはならぬと。


 だが……。


 「申し訳ありません。家柄が違い過ぎるこの縁組。引き受けるようなことがあれば、先祖代々に申し開きができません!」


 強引にそう告げて。


 「隆房!?」


 御屋形様の制止を振り切り、私はその場を立ち去った。
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