厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
***
「隆房(たかふさ)、隆房、どこにおる」
「こちらにおります」
隣の部屋で、後輩の小姓たちに指示を下していた私は、御屋形様の呼ぶ声に気付いて急いで駆け寄った。
「お前の元服祝いに、朝廷より従五位下(じゅごいのげ)の位を賜った。程なく朝廷より正式な使者が、この周防に参るであろう」
「ありがたき幸せにございます」
すでに私は元服を済ませ、陶隆房(すえ たかふさ)と名乗っていた。
朝廷より賜るこの「従五位下」の位。
五位より上は貴族階級、六位より下はそれ以下。
御屋形様は私の地位を、貴族階級にまで高めてくれた。
そして元服と同時に頂戴した、「隆房」の名。
「隆」の字は御屋形様よりいただいたもの、「房」の字は父より受け継いだもの。
私の身にも心にも、そして名前にも御屋形様が刻まれた。
全てにおいて私は、御屋形様に支配されている。
そして御屋形様もまた……常に私を必要としている。
「隆房(たかふさ)、隆房、どこにおる」
「こちらにおります」
隣の部屋で、後輩の小姓たちに指示を下していた私は、御屋形様の呼ぶ声に気付いて急いで駆け寄った。
「お前の元服祝いに、朝廷より従五位下(じゅごいのげ)の位を賜った。程なく朝廷より正式な使者が、この周防に参るであろう」
「ありがたき幸せにございます」
すでに私は元服を済ませ、陶隆房(すえ たかふさ)と名乗っていた。
朝廷より賜るこの「従五位下」の位。
五位より上は貴族階級、六位より下はそれ以下。
御屋形様は私の地位を、貴族階級にまで高めてくれた。
そして元服と同時に頂戴した、「隆房」の名。
「隆」の字は御屋形様よりいただいたもの、「房」の字は父より受け継いだもの。
私の身にも心にも、そして名前にも御屋形様が刻まれた。
全てにおいて私は、御屋形様に支配されている。
そして御屋形様もまた……常に私を必要としている。