厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 伽、とは。


 身分が高い人、主君などの寝所に仕え、寝ずの番をすることを本来は意味するらしいが。


 実際のところは侍女などが主人の寝所を訪れ、そのまま夜のお相手をすること……。


 「相良の……お前の父の差し金か」


 「え……」


 暗闇の中でも、私の表情に怒りが満ちているのを察したようで。


 空蝉は恐れおののきながら、少し退いた。


 「私も軽く見られたものだ。女を送り込めばどうにでもなると思われたようだな。お前の父親に」


 「いえ! 父はそのような大それたことなど、」


 空蝉は慌てて否定した。


 よくよく考えると相良の独断で、このような私を見くびるようなことはできるだろうか?


 私のほうが相良より家柄も地位も上なのだから。


 「まさか……。御屋形様が?」


 「……」


 空蝉は再び黙ってしまった。


 それが真実を告げているように思えた。


 空蝉がこうして、私の寝所へ忍んできたのは……全て御屋形様の差し金?


 私の空蝉の仲を、既成事実化させてしまおうとして?
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