厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 賭けをしようと言い出したのは誰なのだろう。


 企みに同調し、悪乗りした者も同様に、腹立たしくはあるが。


 御屋形様……?


 ふと御屋形様に目線を移すと。


 私を困惑した表情で見つめておられた。


 せっかくの酒宴を台無しにし、物々しい雰囲気をもたらした私は、不快な存在に映っているのだろう。


 私はすでに、迷惑な存在でしかないのか?


 だが。


 御屋形様は平気であられるのか?


 かつて寵童だったこの私に女を送り込み、私が本当に手を出すかどうかを賭けの対象にして。


 高みの見物?


 いや、嘲笑っておられたのか?


 だとしたらそれは、あんまりな仕打ちではないか。


 私の思慕がまだ、完全に途絶えておらぬことを重々承知で。


 御屋形様は私の気持ちを踏みにじり、物笑いの種にしておられるのか……!


 この上ない屈辱に、刀を持つ手が震える。


 「おのれ……!」


 ついに手にした刀を振り上げ、斬りかかった。
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