厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「御屋形様……」


 「私と隆房。どちらかが欠ければ、残されたほうは程なく滅びるであろう」


 「……」


 予言にも似た言葉を告げられた。


 御屋形様は、ご存じなのだ。


 私が御屋形様なしでは生きていられないのと同様に。


 御屋形様もまた、私を失えば全てを失くすも同然であることを。


 そして冷泉どのは、私と御屋形様との強い絆の前に、口をつぐまざるを得なかった……。


 やがて面会の時は訪れた。


 「少しいたずらが過ぎるのではないか、隆房」


 御屋形様の第一声。


 本気ではなくとも、毛利宛にあのような書状をしたためて発見されたのは事実。


 それを理由に死罪を賜っても文句は言えない。


 私は命を賭して、御屋形様の元へと参上した。


 だが御屋形様は今回の一件を、私のつまらぬいたずら程度にしか捉えてらっしゃらない様子で。


 「あの一件の仕返しか?」


 「仕返し?」


 「私がお前の寝所に、相良の娘を遣わした一件」
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