厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 ……先日相良の娘が、わたしの寝所を訪れ伽を申し出たことがあった。


 のみならず御屋形様の取り巻き公家たちは、私が相良の娘に手を出すかどうかを賭けの対象にしていて。


 私は激怒して、御屋形様の面前で刀を振り回し、自宅謹慎を食らったのだった。


 その謹慎期間中に、毛利元就へ手紙を書いた。


 つまり御屋形様は、私がその一件に腹を立てへそを曲げて、腹いせに毛利元就に手紙を書いたと思い込んでいる?

 
 「そのような取るに足りない問題ではありません!」


 つい声を荒げてしまった。


 私が元就に手紙を書いたのは、個人的な感情に流されたからではない。


 長きにわたる苛立ちを、抑えていられなくなったからだ。


 再三の忠告にもかかわらず、一校に収まらない御屋形様の遊興三昧。


 すでに大内家の財政も、危機的状況に陥っている。


 大内家は先祖代々、明との貿易で他の大名家よりははるかに財政は潤っていた。


 なのに御屋形様の豪遊と、大内家に寄生虫のようにはびこる亡命公家たちが金を湯水の如く浪費し続けた結果、枯渇寸前に。
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