厳島に散ゆ～あんなに愛していたのに～

　そして二月の法要。


　半年以上前から私が幹事を務めることは決まっていたのだが、役目を辞退した挙句に欠席。


　昨年の夏に隠居を申し出た際、この幹事役をも辞退するとは伝えておいたはずなのに、御屋形様は大して本気にもなさらなかった様子で。


　今になって私の元へ使者を遣わし、「欠席とはどういうつもりだ」と私を責める内容の書状を送り届けたが、適当に言い逃れをしておいた。


　……昔、山口の大内館からここ富田若山城（とんだわかやまじょう）まで約五時間の道のりを。


　御屋形様が馬を飛ばして私に会いに来たのをふと思い出したりもした。


　今やもう、遠い昔の幻。


　御屋形様が夜の闇をすり抜けて、私の元を訪れることなど……もう二度とないだろう。