厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 ……。


 「お前は昼も夜も、私にとって誰より頼もしい存在だ」


 昼間、側近たちの前で私を寵愛し。


 夜はこうして、床で私を溺愛する。


 肌をその指が優しくなぞり、体の奥から熱を帯びる。


 御屋形様は私の、かけがえのない御方……。


 光源氏に愛された紫の上みたいに、もっと愛して私をさらに開花させてほしいと願った。


 「……この秋に、北九州に再度遠征軍を送る」


 「御屋形様、ついに」


 抱き合った後も、御屋形様の腕に包まれてまどろんでいた。


 御屋形様の北九州遠征の決意に、意識が再び現実へと引き戻される。


 「帝(後奈良天皇)が即位式を挙げられないほどに困窮されておられたから、大金を朝廷に寄進したところ、」


 「はい」


 「その見返りとして、大宰府(だざいふ)長官の地位を賜った。この地位を大義名分に、北九州に攻め入ることができる」
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