厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 私はあえて、反乱軍の歩みをゆっくりとしたものにした。


 すでに大内館の御屋形様の元にも、この謀反の知らせは届いているだろう。


 御屋形様はどのような反応を示されるか。


 残った重臣を通じて、和平交渉を持ち掛けてこられるか。


 それとも……徹底抗戦か。


 私は御屋形様の次の行動をあれこれ予期しながら、これからのことを頭の中でいろいろと考えながら馬を進めていた。


 ……御屋形様はとっくに、陶の軍勢が徐々に山口に迫っていることを知りながら。


 すでに山口の町は、陶軍の接近で戦々恐々としていたにもかかわらず。


 全てがどこか遠い国の出来事でもあるかのように、館にて公方様(くぼうさま;室町幕府13代将軍足利義輝)からの使者を歓待する宴を開いておいでだった。


 まるで現実から目を背けるかのごとく。


 いや、何も分かっておられないのかもしれない。
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