厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「御屋形様、」


 「怖いか?」


 御屋形様は、私をいとおしむようなまなざしで見つめる。


 「愛しい五郎に、血みどろの戦場など見せたくはないのだが。いずれ陶家の当主としてこの私を支えていくためには、避けては通ることのできない道だ」


 「私は、怖くなどありません」


 御屋形様の心配する声を遮るように答えた。


 「私は幼き頃より、誰よりも厳しく武芸を教え込まれてきました。全て御屋形様、しいては大内家をお守りするためです」


 きっぱりと述べた。


 「五郎」


 ますます愛しげに、御屋形様は私の髪に触れる。


 「私は早く戦に出たく存じます。必ずや御屋形様のために武功を挙げ、御屋形様のためになら、この命落としても惜しくはありません」


 「何を申す」


 私の言葉を閉ざすように、突然御屋形様は私の唇に触れた。
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