厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 ……遠い都の、帝(天皇)や公方(将軍)よりも。


 今こうして私を強く抱く御屋形様こそが、私にとってはこの世で一番の御方だった。


 この人のためなら死んでも構わないと心の底から思える、唯一の人だった。


 いつの日か御屋形様に、燃え盛る炎が迫るような時が訪れたら。


 身を賭してでも、降り注ぐ火の粉からお守りしようと日々誓っていた。


 御屋形様のためなら、死んでもいいと思っていた。


 命を捧げても構わなかった。


 そうすることが自らの宿命であると信じていた。


 ……信じて疑わなかった。
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