厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 天文五年(1536年)、九月。


 ようやく大宰府の長官に任命され、北九州攻略の大義名分を得た御屋形様は。


 ついに肥前多久城(ひぜんたくじょう)での戦いで少弐氏を討ち取り、九州北部の平定をほぼ完成させた。


 この戦の指揮を取ったのは主に私の父だったが、私も初陣の日を迎えた。


 主に御屋形様の近くで護衛をするのが仕事で、大規模な戦闘は経験しなかったものの。


 初の戦場にて、血と死とが身近に感じられた経験は、私の使命感をさらに高めたような気がする。


 使命感、すなわち御屋形様をお守りすること。


 御屋形様の支配する大内家の領土を、拡張しそして安定させること。


 御屋形様を日本一の大名として、その御名をこの国中に響き渡らせること……。
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