厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 ……陶家の嫡男として、いずれは大内家の筆頭家老として一門をまとめていくのみならず。


 軍事部門の棟梁として軍勢を率い、大内家に弓引く者は全て成敗していかなければならない宿命にかかわらず。


 御屋形様の言動に一喜一憂し、嫉妬などに振り回される様は頼りなさ過ぎるとは自分でもよく分かっていた。


 にもかかわらず私は、御屋形様に翻弄されてばかりだった。


 この頃の私にとって、御屋形様はまさに世界の全てだった。


 御屋形様の望まれるがままに生きていこうと努めていた。
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