厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 私が18の時、父が亡くなった。


 父の陶興房(すえ おきふさ)は先代の御屋形様の時代から、重臣として大内家を支え続けた。


 今の御屋形様が二十歳そこそこで家督を継いだ際。


 これといった問題も発生せず非常に平和裏に物事が進んだのも。


 私の父のおかげと言っても過言ではない。


 大内家歴代の当主を、五十年近くにわたって支え続けた父がいなくなった影響は少なくない。


 私は若くして陶家の当主として一族郎党を率い、そして同時に。


 大内家の重臣として政権の舵取りをしていかなければならないことに対し、不安も大きかった。


 これからは私が頑張らなければ、いつまでも「興房どのがご存命であられたら……」と言われ続ける。


 父が生前積み重ねてきた以上に、私はさらなる力を尽くして大内家を支えていかねばならなかった。
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