厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
***
父の葬儀も一段落した、その年の秋。
喪主としての勤めをつつがなく終えることのできた私は、安堵したあまり。
夏の暑さから秋の涼しさに移ろいゆく季節の変わり目に、体調を崩し寝込んでしまった。
最初は風邪だと甘くみていたら、体のだるさが長引いて。
公務に差し支えが出てしまう始末で、山口の邸で長い間寝込んでいた。
それでもなかなか体調が回復しないため、本拠地である若山富田城(わかやまとんだじょう;山口県周南市)に引きこもり、休養することにした。
「お前と離れるのは寂しいが、今は地元でゆっくり養生いたせ」
御屋形様は名残惜しそうに、私を帰省させる許しを下した。
家臣ではありつつも、陶家の当主は大内家にとって大切な存在であるため。
陶家の当主が大内館から退出する際は、御屋形様が門まで出て見送るのがしきたりだった。
そのしきたり通り、御屋形様は実家に帰る私をいつまでも見送っていた。
互いの姿が完全に見えなくなるまで、いつまでも……。
父の葬儀も一段落した、その年の秋。
喪主としての勤めをつつがなく終えることのできた私は、安堵したあまり。
夏の暑さから秋の涼しさに移ろいゆく季節の変わり目に、体調を崩し寝込んでしまった。
最初は風邪だと甘くみていたら、体のだるさが長引いて。
公務に差し支えが出てしまう始末で、山口の邸で長い間寝込んでいた。
それでもなかなか体調が回復しないため、本拠地である若山富田城(わかやまとんだじょう;山口県周南市)に引きこもり、休養することにした。
「お前と離れるのは寂しいが、今は地元でゆっくり養生いたせ」
御屋形様は名残惜しそうに、私を帰省させる許しを下した。
家臣ではありつつも、陶家の当主は大内家にとって大切な存在であるため。
陶家の当主が大内館から退出する際は、御屋形様が門まで出て見送るのがしきたりだった。
そのしきたり通り、御屋形様は実家に帰る私をいつまでも見送っていた。
互いの姿が完全に見えなくなるまで、いつまでも……。