厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「隆元を丁重に扱うのは、毛利家の嫡男を洗脳して、大内家にとって都合の良い子分に仕立て上げるためだ。そのためにも今のうちから、十分に教育を施しておかねば、な」


 「本当にそれだけでしょうか」


 嫉妬により御屋形様の言葉ですら、素直に受け止められない私。


 「私がお前を差し置いて、他の男にうつつを抜かすはずがあろうか?」


 そんなことあり得ないといった表情で、御屋形様は再び私の身を床に横たえる。


 「こんなにそばにいるのに、それでもお前は私の心を計りかねているのか」


 「いえ……」


 御屋形様の細く長い指が、首筋から腰へと、背骨に沿って下ってゆく。


 少年の頃から御屋形様によって調教されたこの身は、御屋形様によってしか感じない……。
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